世界の教育の現状

国際社会が2000年に約束したこと

  • グローバルな課題に世界で立ち向かう「ミレニアム開発目標」は、「2005年までに初等・中等教育の男女格差解消」、「2015年までに初等教育の完全普及」を掲げました。 基礎教育(幼稚園、小学校、中学校、成人識字)は人権であり、社会開発、経済発展、貧困削減、環境保護、エイズ対策など、すべての問題の解決の鍵です。

途上国の努力、目標の達成は?

  • 途上国は、教育予算の増加、学費の廃止、教員の質向上などに努め、学校に行けない子どもは、1999年に比べて3300万人減少しました。
  • しかし今も、6700万人の子どもが学校に通えていません(2010年)。 そのうち54%が女の子で、サハラ以南アフリカでは、1200万人もの女の子が一度も学校に通うことなく生涯を終えます。 このままでは、2015年になっても5600万人の子どもたちが学校に通えないことが予想されます。
  • 教育の質の低さから、学校に通っても基礎学力すら身につかないことがあります。 アフリカのいくつかの国では、5年間の教育を受けた人の40%が読み書きできないという調査結果が出ています。
  • 7億9600万人の成人は、読み書きができません。そのうち3分の2が女性です。
  • 2015年までに初等教育の完全普及を達成するためには、教員を190万人増やす必要があります。

「ユネスコ EFAグローバル・モニタリング・レポート2010」(日本語版)より

教育分野への援助

  • すべての子どもが学校に行き、すべての大人が読み書きができるようになるためには、年間3兆5000億円が必要です。このうち、1兆9000億円は途上国政府が教育予算を増して出すことができますが、残りの1兆6000億円は豊かな国が援助する必要があります。
  • 必要な援助額(1兆6000億円)のうち、実際に援助されているのは、3分の1以下の4300億円です。援助額を国の豊かさに応じて分担したとすると、日本は2080億円を援助する必要があります。ところが、日本の基礎教育分野の援助額は、現在わずか300億円です。日本は、援助を7倍に増やす必要があります。
  • 日本のODAのうち、基礎教育分野の援助額の割合はわずか0.7%で、他の先進国の平均の2.1%と比べても3分の1です。 一方、世論調査((財)国際協力推進協会、2009)によると、ODAの必要な分野として、39%の人々が教育を挙げています。 国民は、貧困、保健、難民や被災者への支援、教育分野にODAは使われるべきと考えているのです。

日本の教育援助に対する評価

「教育のためのグローバル・キャンペーン」(Global Campaign for Education)は、各国の教育援助の評価を成績表の形で発表しています。2010年の日本の評価は100点中28点で、「E」評価でした。これは、評価対象となった先進国22カ国中、19番目の成績です。一方で、新政権に対する期待も寄せられています。

日本の成績表(日本語版)のダウンロードはこちら
全成績表(英語)のダウンロードはこちら

日本の教育援助に対する評価

「教育のためのグローバル・キャンペーン」(Global Campaign for Education)は、各国の教育援助の評価を成績表の形で発表しています。 2010年の日本の評価は100点中28点で、「E」評価でした。これは、評価対象となった先進国22カ国中、19番目の成績です。 一方で、新政権に対する期待も寄せられています。

これまでの成果と今後の課題

これまでの成果

世界中のすべての子どもが学校に通えるようになり、質の良い教育が受けられることを目指して、世界のNGOネットワーク(Global Campaign for Education)が毎年実施している「世界中の子どもに教育を」キャンペーン。 2003年から始まった当初の参加者は200万人でしたが、2010年には1200万人もの参加がありました。

「世界中の子どもに教育をキャンペーン」をはじめとする、様々な働きかけにより、成人非識字率は7億8000万人(2004)から7億5,900万人に減ってきています

ミレニアム開発目標に向けた、これまでの進捗

  • 1998年から2008年の11年間で、5200万人が新たに就学。就学率は3分の1上昇。
  • 南、西アジアの未就学児童数は半減
  • サハラ以南アフリカと南アジアを除くと、小学校年齢の子どものうち、10人に9人は就学している。
  • 途上国の3分の2は、初等教育におけるジェンダー平等を達成している。
政策事例
学費の廃止 2005年に初等教育の授業料を免除した結果、始業初日に新たに50万人の児童が入学した(ブルンジ)
学費を廃止した後、女子の就学率が20%改善した。貧困層の女子の就学率は46%から82%にまで改善した(ウガンダ)
エイズ遺児や感染児童への支援 HIVに感染した子どもが学校を中退していたが、学費の廃止と給食によって、多くのHIV陽性のエイズ感染児童が学校に戻った(レソト)
児童労働の減少 授業出席などの条件に基づいて貧困家庭への収入支援を実施し、500万人が就学した(ブラジル)
ジェンダー格差の減少 政府による女子児童への奨学金を導入した地域の女子就学率が、国全体のそれと比べて2倍に上昇した(バングラデシュ)
中途退学した若者・成人向けの教育機会の提供 基礎教育9年を修了していない若者や成人50万人が初等教育プログラムに参加した。
簡単にアクセスできる学習センター、適切な内容、柔軟なスケジュール、コミュニティの強い支援が特長(ホンジュラス)
障がいをもつ子どもの統合教育 通常の学校が障がいのある子どもを統合的に受け入れることを支援し、39,000人がその恩恵を受けた(ウルグアイ)

今後の課題

このような改善がみられるものの、未だ多くの課題が残されているのも現実です。

  • 未だ6700万人が小学校に通ったことがない
  • サハラ以南のアフリカでは毎年1000万人の児童が退学
  • 途上国では1950万人の子どもが栄養失調(3人に一人)
  • 2008年までに小学校でのジェンダー平等を達成していたら、3600万人の女の子が就学できていたはず。
  • 世界では7960万人の成人が非識字(17%)その3分の2は女性
  • 普遍的初等教育を2015年までに達成するには190万人の新規教員が必要

本年も多くの方々にキャンペーンに参加いただくことで、途上国の教育の課題を考え、そしてその解決に向けて行動できるよう、「世界中の子どもに教育を」キャンペーンを進めていきます。