世界の教育はどうなっているの?

国際社会が2000年に約束したこと

国際社会は教育を受けられない子どもたちのために何をしているの?

万人のための教育(EFA:Education for All)」って知ってるかな? 教育におけるグローバルな課題に世界で立ち向かうために、2015年までに世界中の全ての子どもたちが小学校に行けて、大人たちが字を読めるようになる環境をつくろうとする取り組みのことだよ。2000年に開催された「世界教育フォーラム」で日本を含む164の国が合意し、次の6つの目標を掲げたんだ。

(1)就学前保育と教育を改善しよう
(2)2015年までにすべての子どもが小学校を修了できるようにしよう
(3)青年・成人の学習、ライフスキルプログラムを普及しよう
(4)2015年までに成人(特に女性)識字率を 50% 改善しよう
(5)2005年までに初等及び中等教育における男女格差を解消し、2015年までに教育における男女平等を達成しよう
(6)教育の質を改善しよう

これに対して、途上国も先進国も、国連機関やNGOなどがいろいろな取り組みをしているよ。 基礎教育(幼稚園、小学校、中学校、成人識字)は人権であり、社会開発、経済発展、貧困削減、環境保護、エイズ対策など、すべての問題の解決の鍵なんだね。

途上国の努力、目標の達成は?


世界中が同じ目標に向かって力をあわせているんだね。その取り組みの結果どうなったの?

途上国は、教育予算の増加、学費の廃止、教員の質向上などに努め、学校に行けない子どもは、1999年に比べて4700万人も減少したんだ。 他にもいくつか成果があるよ。
詳しくはこちら

しかし今も、小学校にすら通えていない子どもは6100万人もいるよ(2010年)。そのうち54%が女の子で、サハラ以南アフリカでは、1200万人もの女の子が一度も学校に通うことなく生涯を終えてしまうんだ。 残念ながらこのままでは、2015年になっても5600万人の子どもたちが学校に通えないと予想されているんだよ。 2015年までにすべての子どもたちが学校にいけるようになるには、教員を190万人増やす必要があるともいわれているんだ。


はやく世界中の子どもたちが小学校に通えるといいのにね。

そうだね。でも、学校にさえ通えればいいっていう問題でもなくて、教育の質もとっても大事なんだ。学校に通っていても、教科書が足りなかったり、十分な知識をもった先生がいなかったりすると、基礎学力すら身につかないことがあって、2億5000万人の子どもが小学4年生になってもまだ読み書きができなかったりするんだよ。

さらに、教育を必要としているのは子どもだけではないよ。世界では読み書きができない成人が7億7500万人もいて、そのうち3分の2が女性なんだ。まだまだ問題は山積みなんだね。
詳しくはこちら

教育分野への援助

この問題を解決するためにはとってもお金がかかりそう!

すべての子どもが学校に行き、すべての大人が読み書きできるようになるためには、年間3兆5000億円が必要だよ。このうち、1兆9000億円は途上国政府が、軍事費を削ったりして教育予算を増やすことができるけど、残りの1兆6000億円は豊かな国が援助する必要があるんだ。


お互い助け合わなきゃいけないんだね。日本はどのくらい援助しているの?

必要な援助額1兆6000億円のうち、世界で実際に援助されているのは、3分の1以下の4300億円だけなんだ。援助額を国の豊かさに応じて分担したとすると、日本は2080億円を援助する必要があるんだけど、日本の基礎教育分野の援助額は、現在300億円だけ。日本は、援助を7倍に増やす必要があるんだよ。 日本のODA(政府開発援助)のうち、この基礎教育分野の援助額の割合はわずか0.5%で、英国の4.8%には到底及ばないし、他の先進国平均の2.1%と比べても4分の1しかないんだ。


日本の教育援助の割合は低いのか。ODAは他には何に使われているの?

経済セクターへの援助が一番大きいんだ。DAC※諸国の平均と比べると3倍近くがこの分野に集中しているんだね。日本の援助の41.5%が道路建設などの経済インフラに使われているから日本の援助はハコモノ中心と批判されているんだ。

一方、世論調査((財)国際協力推進協会、2009)によると、ODAの必要な分野として、39%の人々が教育を挙げているんだ。 国民は、貧困、保健、難民や被災者への支援、教育分野にODAは使われるべきと考えているんだね。

※DAC  開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee):
開発途上国への開発援助を目的とする国際フォーラム。OECD加盟国34カ国のうち23カ国と欧州連合 (EU) により構成される。


じゃあ、どうしたらいいんだろう?

途上国で教育支援を行う日本のNGOネットワーク「JNNE」では、日本政府にこんな提言をしているよ。

提言1:基礎教育援助の割合を増やしてください
提言2:脆弱国、低所得国への配分を増やしてください
提言3:技術協力と財政支援を同時に行いましょう
提言4:教育のためのグローバルパートナーシップ※GPE基金にもっと配分を

※GPE基金:「2015年までの初等教育の完全普及」の達成のため、世界銀行主導で設立された国際的な支援の枠組み


ODAの予算は限られているから、効果的に使ってほしいね。

すべての子どもに教育を。みんなが動けば世界は変わる。

「世界一大きな授業」を日本で実施しているのもJNNEなんでしょ?

そう。JNNEとプラン・ジャパンが共催する「世界一大きな授業」は、世界中のすべての子どもが学校に通えるようになり、質の良い教育が受けられることを目指して、世界のNGOネットワーク(Global Campaign for Education)が毎年実施している「世界中の子どもに教育を」キャンペーンのひとつなんだ。
世界では2003年にスタートし、2008年には885万人が参加してギネスブックにも登録されたんだよ。日本でも、2012年には502校/グループ、5万5,485人が参加したんだ。

「世界中の子どもに教育を」キャンペーンをはじめとする、様々な働きかけにより、タンザニアでは過去10年間で教育にかけるお金の割合が3倍にも増えたんだ。タンザニア政府は全予算の26%を教育に使っているし、家庭だって政府予算の1/3を支払って、子どもたちの教育を支えている。こうした努力があって、小学校にいける子どもたちの数も2倍になったんだ。少しずつ世界の教育の現状は改善されているんだよ。


みんなが動けば世界は変わるんだね!ぼくも自分に何ができるか、考えてみるよ!

これまでの成果と今後の課題

EFA目標に向けた、これまでの成果

  • 南、西アジアの未就学児童数は半減。
  • サハラ以南アフリカと南アジアを除くと、小学校年齢の子どものうち、10人に9人は就学している。
  • 途上国の3分の2は、初等教育における男女平等を達成している。
  • 様々な国が政策を改革。
政策 事例
学費の廃止 2005年に初等教育の授業料を免除した結果、始業初日に新たに50万人の児童が入学した(ブルンジ)
学費を廃止した後、女子の就学率が20%改善した。貧困層の女子の就学率は46%から82%にまで改善した(ウガンダ)
エイズ遺児や感染児童への支援 HIVに感染した子どもが学校を中退していたが、学費の廃止と給食によって、多くのHIV陽性のエイズ感染児童が学校に戻った(レソト)
児童労働の減少 授業出席などの条件に基づいて貧困家庭への収入支援を実施し、500万人が就学した(ブラジル)
ジェンダー格差の減少 政府による女子児童への奨学金を導入した地域の女子就学率が、国全体のそれと比べて2倍に上昇した(バングラデシュ)
中途退学した若者・成人向けの教育機会の提供 基礎教育9年を修了していない若者や成人50万人が初等教育プログラムに参加した。
簡単にアクセスできる学習センター、適切な内容、柔軟なスケジュール、コミュニティの強い支援が特長(ホンジュラス)
障がいをもつ子どもの統合教育 通常の学校が障がいのある子どもを統合的に受け入れることを支援し、39,000人がその恩恵を受けた(ウルグアイ)

今後の課題

  • このような改善がみられるものの、未だ多くの課題が残されているのも現実です。
  • 未だ6100万人が小学校に通っていない
  • サハラ以南のアフリカでは毎年1000万人の児童が退学
  • 発育不良に苦しむ子どもは1億5700万人(4人に1人)
  • 本年も多くの方々にキャンペーンに参加いただくことで、途上国の教育の課題を考え、そしてその解決に向けて行動できるよう、「世界一大きな授業」を進めていきます。