【なぜ紛争下の教育を守ることが重要なの?】
長引く紛争下で、子どもたちの教育の機会が奪われています。
生徒や教員、また学校の校舎や通学のための道が攻撃を受けることで、子どもたちは学校に行くことが難しくなります。また紛争下では、学校の校舎が、兵士の訓練所や武器の隠し場所といった軍事目的で使用されるケースがあり、そのような学校は対立する勢力から攻撃を受けやすくなり、子どもたちはますます通学することが難しくなります。
紛争の影響で学校に通えない子どもたちは、教育を受けたいと強く願っています。
教育を受けることはすべての子どもたちの権利です。
これに加え、紛争下の教育を守ることは、次のような理由から重要です。
●子どもたちは教育を受けることにより、文字の読み書きや算数などの基礎的な知識を得るだけではなく、学校内で過ごすことにより基本的な生活習慣を身につけたり、社会性を身につけたりすることができるため
●特に紛争下では、学校が、子どもたちを暴力や虐待から守る役割を果たしたり、兵士に勧誘されるといったリスクを減らしたり、子どもたちに心理的な安心感を与える役割を果たすため
●さらに、子どもたちが暴力によらない問題解決の方法を学ぶなど、その国や地域社会の復興や再建に貢献することができるようになるため
このような理由があるにもかかわらず、紛争下では、食料や住まいへの支援が優先され、教育に必要な資金配分が後回しになりがちです。
【紛争下の教育に優先的に資金を配分する国際基金の設立】
こういった状況を解決するための議論が2016年の世界人道サミットで行われ、国際基金「Education Cannot Wait(ECW)-教育を後回しにはできない基金-」が設立されました。ECWは、世界で初めての、そして唯一の、紛争などの緊急下の教育を対象とした国際基金です。
ECWは、紛争や災害などの緊急事態が発生した直後でも、教育が後回しにならないよう、緊急対応として教育支援のための資金配分を行います。また、紛争が長引く地域での教育を守るために、数年におよぶ長期的な支援を行う場合もあります。さらに、緊急下において、質の高い教育を継続させるための、政策提言や仕組みを強化するための支援も行っています。
ECWの活動は、支援を受ける国の複雑な状況に対応するため、ユニセフ(UNICEF)や、Global Partnership for Education(GPE)-教育のためのグローバルパートナーシップ-、NGOなど、教育分野の活動を実施する組織と連携しながら行われます。また、人道支援が必要とされる緊急期だけではなく、紛争後の復興期にも支援を行います。
【世界の子どもたちとECW】
紛争や戦争などの危機が起きると、多くの子どもたちの教育の機会が奪われます。
2021年末には5,500以上の学校が治安悪化により閉鎖され、1,300万人の子どもたちが学校に通えなくなりました1。世界では、今もなお2億2,200万人の子どもたちや若者たちが、戦争や災害、国内外に逃れなければいけない状況となり、適切な教育を受ける機会を失っています2。
このような子どもたちが再び学校に通えるようになるまで、これまで非常に長い時間がかかっていましたが、彼らの教育を後回しにせず、より早く質の高い教育を受けられるようにするためにECWが役割を果たします。そして、ECWが活動するための資金を、世界の国々、特に経済的に豊かな国々が、協力して出し合う必要があります。
緊急時および長期化する危機下の教育を守るための資金は常に不足しており、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行して以降、資金不足はさらに悪化しています。
ECWが、紛争や戦争の影響が深刻な地域の子どもや若者に質の高い教育を提供するためは、日本を含む国際社会が協力することが強く求められています。
参考:
1)ECW, “222 Million Dreams: A Case for Investment 2023-2026”, p.22.
2)ECW, “222 Million Dreams: A Case for Investment 2023-2026”, p.4.