紛争下のアフガニスタンの子どもたちと教育―女子・女性の教育が禁止されている世界で唯一の国

アフガニスタンの紹介

アフガニスタンは中国、イランなど6か国に囲まれている南アジアの国で、山々が美しく海のない内陸国です。面積は約65万平方Kmと、日本のおよそ1.7倍です。砂漠のイメージがあるかもしれませんが、春には桜に似たアーモンドの花がきれいに咲きます。ぶどう、メロン、ざくろなどの果物も美味しいです。

人口は4,000万人以上と推定され、パシュトゥン、タジク、ハザラ、ウズベクなど様々な民族がいて、多くの人々がイスラム教を信仰しています。公用語はダリ語とパシュトー語で、右から左に書くアラビア文字を用います。ほかにも40以上の言語があります。

アフガニスタンの地図(出所:JICA アフガニスタン復興支援)
中央部バーミヤン州の子どもたち。2001年にタリバンに破壊された東西2つの大仏の跡がみえる(写真:小荒井理恵)
たわわに実ったぶどう(写真:小荒井理恵)

アフガニスタンの紛争と教育状況

アフガニスタンでは40年以上も紛争や政治的な混乱が続いているほか、干ばつ、地震、感染症、貧困なども加わり、子どもたちは大きな影響を受けてきました。2023年には、1,500万人以上の子どもを含む2,800万人以上が、生きるために緊急的な支援を必要としています。

1979年~89年の旧ソビエト連邦による侵攻、内戦を経て、1996年にはタリバンと呼ばれるイスラム主義勢力が国土の大半を支配し、10歳程度以上の女子・女性の教育は一部を除き禁止されました。2001年にアメリカで同時多発テロ事件が起きると、その首謀者がアフガニスタンに匿われているとされたため、アメリカ・イギリスがアフガニスタンに空爆などを行い、タリバン政権は崩壊しました。

2002年には選挙で選ばれた政府ができ、日本を含む外国からの支援とアフガニスタン政府、人々の努力の結果、学校へ通う子どもの数は約100万人(2001年)から約1,000万人(2018年、4割が女子) と国の歴史上で最も多くなりました。地雷の被害で左腕を失いましたが、「最強の銃はペンです」と、医者を目指し自ら学校に編入の手続きに来た、元少年兵もいました

※1 UNESCO. (2021). The right to education; What’s at stake in Afghanistan? A 20-year review. https://en.unesco.org/sites/default/files/afghanistan_v11.pdf

※2 小荒井理恵「アフガニスタン復興への教育支援―子どもたちに生きる希望を」2011年、明石書店

でも、2018年時点で370万人(6割が女子)が学校に通えませんでした。文字の読み書きができる15歳以上の女性の割合は30%に満たず、さらに教育支援が必要でした。

適切な学校の施設がなく崖で勉強する子どもたち(写真:小荒井理恵)

ところが2021年になると、約20年間アフガニスタンに駐留した米軍が急速に撤退し、タリバンが再びアフガニスタンを武力で支配しました。8月15日は日本では終戦記念日として平和への希望の日ですが、アフガニスタンではタリバンが首都カブールを陥落させ、多くの人々・子どもたちにとって新たな恐怖の始まりの日となりました。

「すべての人、特に女性にとって恐怖であり敗北です」と話す女性もいました。

現在の教育状況と子どもたちの声

 タリバンが再び国を支配した直後から、女子の中学・高校の教育は正式に許可されていません。2022年末には女性が大学へ通うことも禁止され、期末試験中に禁止の命令を聞いた女子学生は泣きました。もしあなたが、女の子であることを理由に学校へ行くことを禁じられ、将来叶えたい夢を制限されたら、どう感じますか?

なぜタリバンは女子・女性の教育を禁止するのでしょうか。タリバンは「イスラム法の範囲内で」女性の権利を尊重すると述べましたが、女子・女性の教育はイスラムの教えに反するのでしょうか。

いいえ、女子・女性の教育はイスラムの教えにまったく反しません。むしろ、イスラム教では「知識を得ることは男性、女性にかかわらず、すべてのイスラム教徒の義務です」など、教育の重要性を教えています。他のイスラム諸国もタリバンの女子・女性の教育の禁止を非難しています。

タリバンが女子教育を禁止する説明として、男女が同じ部屋で学んではならないなどがあげられますが、これは古くから一部の保守的な人々が持つ伝統的な価値観の影響があると考えられます。たとえば女子はある年齢以上になったら成熟した女性とみなされ、家族以外の男性に見られることを嫌う人々もいます。もっとも、タリバンといっても皆が同じ考えではなく、女子教育に理解を示す人も中にはいます。

アフガニスタンの子どもたちは今、どのように感じているのでしょうか。世界の指導者たちに宛てられたメッセージです。

「私は医者になりたい!私や私の姉妹たちは教育を必要としています。私たちは世界から忘れられるべきではありません。私が教育を修了し外科医になったら、私の国の次の世代の生活を変えるでしょう」ナフィサ(女子)

https://www.educationcannotwait.org/news-stories/postcards-the-edge/nafisa-afghanistan

「僕の夢はエンジニアになって人々のために尽くすことです。僕の両親は、戦争や終わらない危機のため読み書きができませんが、僕は教育を受けたい僕たちアフガニスタンの子どもは、二度と戦争はいりません。戦争の代わりに、読むための本と書くためのペンが欲しい」アブドゥル(12歳男子)

https://www.educationcannotwait.org/news-stories/postcards-the-edge/abdul-12-afghanistan

子どもたちの夢を叶えるため、何ができると思いますか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次